矢口VS辻、遺恨決着戦(タッグマッチ&シングルマッチ)
―相変わらず二人の間には不穏な空気が漂っている・・・。
ほんの一時的な口喧嘩では終わらずに、今でも矢口は辻に対し、
「あの時からずっと気持ちは変わらないですよ。ミニモニ。としてタッグ組んで試合やっていくつもりは
全くないです。」
と縁切りの状態。歌手活動にまでは支障をきたしていないものの、
番組の収録では辻が何かボケ発言をする度に、矢口は不機嫌な表情でしらけた素振りを見せている。

一方、辻へも控え室へ向かいインタビューを試みたのだが、一切のコメントも残さず取材を拒否、
関係者からドアを閉められた。不可解な行動ではあるが、部屋の中からはいつもと変わらぬ
加護との笑い声が漏れていたので、そう心配はなさそうだ。
それでは先日に行われた試合の方へ移るとしよう。


9月29日おなごやドーム、タッグマッチ 30分一本勝負
「矢口&保田組」対「飯田&辻組」


―試合開始時の先発を決める場面で、観客からは矢口・辻両コールが巻き起こり、それに両者が
応えて矢口対辻で試合はスタート。早速お互いががっちりと腕四つに組み合う。
その後それほどは激しい攻撃を仕掛けることなく、矢口→保田、辻→飯田に交代する。

この二人は反対に張り手、膝蹴りで序盤から積極的に打ち合いを展開。ロープワークを絡めての
ダイナミックなジャンピングニーがお互いにぶつかり合い、会場のテンションは一気にヒートする。

このテンションを保った状態で矢口と辻の対戦に切り替えたいところだが、保田がエプロンの辻を
何度も場外に蹴落とし、飯田も矢口を執拗に場外へ引きずり込む。逆に保田と飯田が
「私達の闘いなんだ」と言わんばかりに、リング上で凌ぎを削る。

試合後半、普段から共闘している矢口と保田が息の合ったコンビネーションで飯田を追い込み、
結局この日は辻に出番が無いまま、保田Y・S・D→矢口スーパーマリッペダイナマイト→
保田サムライボムと完膚無きまでにボム技のフルコースで、飯田からフォールを奪った。

矢口 ○保田  対 ×飯田  辻
(16分13秒、サムライボム)


10月13日行楽園ホール、シングルマッチ 60分一本勝負
「矢口 真里」対「辻 希美」


―先日のタッグマッチではあまり二人が接触しないまま勝負が決まってしまったため、
この試合で二人がどんな動きを見せるのか、俄然、会場に緊迫したムードが漂った。
前回と同様、派手なマイクパフォーマンスなども行うことなく、普段よりも更におとなしい状態で
試合が始まった。この異様な静けさの中、一体二人はどのような心境でいたのだろうか。

序盤、攻撃的ながらも慎重さを併せ持つ正確なインサイドワークで、矢口が一歩リード。
辻に今一つ元気さが感じられない。強引なまでも自らのペースへ引きずり込ます、
いつもの様な姿が見られぬまま、開始15分、20分と過ぎて行く。

矢口がフィニッシュへ持ちこもうとトルネードボムを仕掛けたのを辻が切り返して丸め込むが、
餅つき式のような体勢で矢口がそれを持ち上げ叩きつける。この辺りの動きもどうも冴えない辻。
取材にノーコメントしたのも含め、やはり精神的なダメージを抱えているのかもしれない。

この後にスーパーフリークも決め、矢口が依然と圧倒的なペースで勝利を間近に控える。
この状態にセコンドの加護も心配そうに見つめている。このまま試合は終わってしまうのか。

と、ここで辻がスクリューハイキックを決めようやく反撃に転じる。これを受けた矢口が猛スピードで
突っ掛かりに行くのをかわし、鮮やかなムーンサルトキック。辻が本領を発揮しはじめる。
そして「ワァーー!!」と叫んで地団駄を踏みながら辻がアピール、息を吹き返したような会場の
大声援で、注目を一点に集めさせた辻。

心の迷いが解けたのか、ここからはつらつとした動きで矢口に食って掛かる。
だが矢口もこれに乗せられずに、チャンスとみたら的確にカウンターで技を仕掛けていき、
一発逆転の大技を狙う機会を伺っている。

開始から35分が経過。お互いスタミナの消耗を感じさせないスピーディーな闘いを繰り広げている。
若干矢口の表情が堅い感じだが、やる気をみせる辻との闘いを満喫しているように見えた。

試合も大詰め、雪崩式技を取り合い一発の勝負にかける二人。ノンタイトル戦ながらも息を飲む
白熱した試合展開で観客を魅了。“因縁”を“激闘”に変えることが一人前のレスラーの証である。

開始45分で、辻が雪崩式みちのくドライバーを炸裂。カウント大合唱の中、矢口がカウント2で
力一杯両手を挙げて返す。すぐさま辻がクルックヘッドシザースにいったのを矢口が持ち上げ、
コーナーに当ててからオクラホマスタンピートで叩きつける。一歩も譲らせない覇気が感じ取れる。

そしてトルネードボムの体勢に入ったのも辻がフランケンシュタイナーで返す。
目が離せない一進一退の攻防が続き、試合時間は既に50分を経過。それでも留まるところを
知らず、55分、56分と60分引き分けまであとわずかに迫っていく。

辻のチャッキリドライバー、矢口のスーパーフリークも決まらず、遂に60分フルタイムで決着つかず。
両者引き分けのゴングが鳴ったところで、両者が向き合って立ち上がり、近づいていくと
矢口が辻の肩をそっと撫でて、二人の健闘をたたえる仕草を見せたのである。辻も笑顔で応え、
マイクを持ち出すと、
辻「ミニモニ。は矢口さんなんてい〜らないよーぉだ!悔しかったら
こっこまでおいで、あっかんベーー。キャハハハハ!!」

と仲直りかと思ったら矢口を小馬鹿にしてリングから走り逃げてしまったのである。これに矢口が
矢口「おーい辻まてよー!絶対ゆるさないからなー!」
これをリングの隅で笑って見ている中澤。“因縁”は終わってないものの、この日常的な二人の
微笑ましい光景を見ていれば、こちらから心配することは何も無くなったのではなかろうか・・・

△矢口 真里  対  辻 希美△
(60分、引き分け)