第5章・唯我毒尊編

〜予選リーグ3日目・Aブロック〜





<凄井宇座子の控え室>




肝子:
「アタシ達を呼び出して何の相談かと思ったら、やっぱりミーシャ・フォーリーのことだったのね。
他団体の選手が言ってることなんだし、そんな深刻な顔しなくたって大丈夫よぉー。」

宇座子:
「他団体の選手だから問題なんでしょ!?ジャガスキーとつるむぐらいならまだしも、
アイツは武者逝との3連戦で勝ち越したらハンデ戦でワタシと勝負しろだなんて
言い出してるのよー!?」

紀所:
「宇座子、ワタシ達武者逝の強さを信用してないことー?オゲレッツと天栗だったら
充分勝てるでしょ。勝てば何も考える必要なんてないじゃないの。」

宇座子&肝子:
「そう言ってるアンタが負けてるじゃないの!!」

紀所:
「ま、まぐれよ・・・。それに累計ポイントではワタシが勝ってるんだから。」

宇座子:
「仮にオゲレッツと天栗が勝ったとしたって、アイツらがそれでおとなしくしてると思うー?
また違うことを企むでしょうよ。」

肝子:
「その時はその時で、アタシらがついてるんだから大丈夫よぉー。

じゃあ、アタシがこないだ言ってた三沢いよしのコンサートへ行った時の感想、
続きから始めるわね。ドンゾコ節を皆で振り付け合わせながら聴いてる時にさぁー、
ステージのはしっこの警備員の若いお兄さんが陰でクスクス笑ってんのよぉー。

なぁーにクスクス笑ってんだと思ったら、アタシが着てた勝負服のブタ柄タンクトップと
ウシ柄のロングスカートを指差して笑ってたのよぉー。アタシ頭に来ちゃったから、
コンサートが終わった後その人に注意したのよ。そしたらね、その人が
『よくお似合いだったもんで、“ドンゾコ節”というより“ズンドウ節”だ、あるいは
“トンソク節”だと次から次へと名案が思い浮かんじゃって、つい大笑いしちゃいまして。』
って言ったのよぉー!?失礼しちゃうでしょ人が着ている服にケチつけるなんてー。」

紀所:
「考えらんないわねー。肝子が三沢クンのために着てきた勝負服なのにー。」

肝子&紀所:
「まったくこれだから最近の若いモンはねぇー、アッハッハ!!」

宇座子:
「・・・・・・・・・・・・・・。」

肝子:
「でも三沢クンは最近の若者でもぜんっぜん違うわね。握手会の時うちの牧場でとれた
ロースハムをプレゼントしたんだけど、三沢クンったら忙しい時なのにその場で食べてくれて、
『おいひぃです僕も牧場へ遊びに行っていいですか?』って。アタシそれを聞いた時はもう、
心臓が爆発しそうになって。一生三沢クンについていこうって決めたわよぉー。
やっぱり若い人はいい。エキスが違うものー。当分やめられないわねー。」

紀所:
「やめられないねー。ワタシも男狩りは一生続けていくわ。まだ若い男も引っ掛かるから。」

肝子&紀所:
「まったくこれだから最近の若いモンはねぇー、アッハッハ!!」

宇座子:
「・・・・・・・・・・・・・・。」

肝子:
「・・・ウーちゃん?」

宇座子:
「・・・ワタシ、オーナーにミーシャの暴走を止めさせるよう言ってくるわ。
このまま黙って見てるわけにいかないから。絶対好きなようにさせないから。」

肝子:
「ウーちゃん・・・。」

紀所:
「宇座子、なにもそこまでムキになることないでしょ。だって今日はオゲレッツが・・・」

宇座子:
「二人は分かってないわよ!じゃあ行くわ。バタッ(ドアを閉める音)」

肝子:
「ウーちゃん一体どうしちゃったんだろう・・・。」

紀所:
「ちょっと疲れてるだけよ。交流戦で調子良くないから、イライラしているのかも。」

アングル提供:自分











−第1試合−
(3104pt) 桃見 美香 VS ゴッツァン (2080pt)


ファイトスタイル、レスリングセンスにお互い通じる部分もあるのか、序盤、中盤からスピード感溢れる攻防を展開するこの闘い。開始2分台桃見のモンゴリアンチョップにゴッツァンがDDTで一歩返すと、その後桃見がカウンターの一回転ドロップキック、それに対しゴッツァンが高速ブレーンバスターで投げつければ桃見も勢いよく反動をつけて投げつけるタイガーネックチャンスリードロップ。

そこから更に桃見がカウンターの一回転ドロップキック、モンゴリアンからの極楽固めと攻撃を追加しまた一歩リードするかと思えばゴッツァンもDDT、これに桃見はスイングネックブリーカードロップ、至近距離での一回転ドロップキックと繋ぎ、再び手数でゴッツァンを上回ってみせると、そのゴッツァンも桃見をロープに振って同じく一回転ドロップキックを命中。やられた分を取り返しますが、桃見もこれに対してナックルアローからロープに振って、自分の方が上だとばかりの一回転ドロップキックを再度ヒット。両者一歩も引くことなく一進一退の攻防を繰り広げます。

そんな中でもやはり技を多く決めているという点で桃見に分があるか。この後カウンターのトラースキックから極楽固め、更にソバットでゴッツァンを倒していけば自らコーナーに登り、糸巻きアピールからミサイルキックを敢行。若干遅れを取ったゴッツァンも、直後にヘッドロックから至近距離での一回転ドロップキックをヒット、桃見もスイングネックブリーカーで返しますが、ゴッツァンがロープに振ってのジャンピングネックブリーカードロップからスリーパーへ。手数で五分に持ち込もうとします。

更に桃見をコーナーへ寄せ、雪崩式の大技で一発逆転のチャンスを狙いますが、冷静に見ていた桃見がゴッツァンを場外へ投げ落とし。するとここで桃見、ピースポーズで観客にアピールするとコーナーへ登り、場外のゴッツァンに向かって鮮やかな宙を描くムーンサルトアタック敢行。これには場内も大歓声、一気に試合はヒートアップを迎え、先に場内に戻ったゴッツァンが桃見をロープに振ってのスクラップバスターからバックを取ると、ジャーマンスープレックスで逆襲に。

更にもう一度ロープに振ればスパインバスターからランニングのダブルニープレス。その後ゴッツァンがもう一度スパインバスターに捕らえて、OH!アピールを決めればロープへ走って一回転ドロップキック。自分の持ち味としているロープワークを多用したファイトを最大限に利用するゴッツァン、この後再びロープへ振ってジャンピングネックブリーカーを狙いますが、これはかがんでよけた桃見、そのままゴッツァンの首元を捕らえてタイガーネックチャンスリードロップ。

反撃に出る桃見がここからエプロンサイドに移ると、立ち上がったゴッツァンにスワンダイブミサイルキック命中、対するゴッツァンも桃見をコーナーに寄せ串刺しのボディスプラッシュで倒していき、コーナーへ登りセントーン・アトミコ投下。すぐに桃見もフロントスープレックスホイップで再び反撃したかと思えば、ゴッツァンがバック取りをエルボーで防ぎ、ランニングの一回転ドロップキックをここでもヒット、もう一度桃見をコーナーに寄せ再度ボディスプラッシュを決めてかかりますが、これは読んでいた桃見がかわします。


ゴッツァンが自らコーナーへ激突しダウンしている間、雄叫びガッツポーズでフィニッシュを宣言する桃見、バックを取ってドラゴンスープレックスホイップ。サイクロンホイップでリング中央にポジションを整えれば、起き上がるゴッツァンの死角を狙い済まし、今大会初披露の「ミカ☆ストライク(スクリューハイキック/走り)」炸裂。最後の締めに取り掛かるべく、ここから更にスイングネックブリーカー、ランニングギロチンドロップ、フロントスープレックスホイップと技を重ね、桃見の勝利が間近に迫ります。

しかし、余力をわずかに残していたゴッツァンが桃見をコーナーに寄せ、先程も一度狙っていた必殺「ゴマキにKNOCK OUT!(雪崩式ドラゴンスープレックス)」を狙って組み付きへ。が、コーナーでの攻防はもはや桃見には通じず、逆にタイガーネックチャンスリーで投げつけていく桃見が再びフィニッシュへの足場を整えます。残すは必殺技「モモミ☆ラナ(ミステリオ・ラナ)」でのピンフォールのみか、ここから桃見が最後に賭けるバック取りへ、しかし最後に賭けているのはゴッツァンも同じだったのか、ここでクルッと体勢を入れ替えたゴッツァンが奥の手・前方回転エビ固めで一発逆転を狙う執念の丸め込みへ。

勝利を完全に確信していただけに、ここでの丸め込みにはさすがの桃見も虚を突かれたか、両足をがっちりとロックされたこのフォールから逃れることができず、無念の3カウント献上。苦戦を強いられた中丸め込みで辛くも勝利を掴んだゴッツァンが、3日目にしてようやく1000ptオーバーのポイントを獲得。しかしこれまで稼げなかった分のポイントが響いているため、累計ポイントでは桃見が上回る結果となっています。

×桃見 美香  対  ゴッツァン○
(14分25秒、前方回転エビ固め)


獲得ポイント 累計ポイント
桃見 美香 1425pt 4529pt
ゴッツァン 1925pt 4005pt




−第2試合−
(3257pt) スティーブ・レイナ VS メチャ・ハデーメン (3281pt)


2日目のゴッツァン戦で完敗を喫した悔しさもあるのか、いつも以上に積極的な攻めを見せるハデーメン。押され気味のレイナも4分台にハデーメンを場外に落とすと、降参アピールであえて弱気な態度を見せておいて、場内に戻ったハデーメンを顔面掻きむしりのトラップを引っ掛けるなど、精神戦で優位に立とうとしますが火に油を注いでしまったか、この後ハデーメンは更にリードを広げていき、ダイビングニードロップ、バックフリップ、卍固めなどを重ねて6分台に、レイナを場外に落とし込んでのトペ・スイシーダ敢行。

場外戦ではレイナがショートエルボーを見舞い、バックを取りに行きますがハデーメンがレッグスピンで切り返し、その後場内戦でレイナがブレーンバスターを狙うも身を翻してバックにつくハデーメン、片手半上げアピールを挟んでの飛びつき後方回転エビ固めで3カウントに迫るフォール。レイナもこの後フライングメイヤー、スイングネックブリーカーなどを繋ぎ応戦するものの、なかなか反撃の起点となる技を見出せず、ピンチが続きます。

   

10分以内で勝利を決めてしまう勢いのハデーメンが、トライアングルサインからのジャックナイフ固めで再びフォール、更にもう一度トライアングルサインを見せたかと思えばバックを取ってのエレガント・コケティッシュ・ジャーマンも炸裂。2カウントで粘ったレイナですが、まだまだ攻め疲れを見せないハデーメン、ペンデュラムバックブリーカーからのドルフィンアピール付きミサイルキック、そこからのジャパニーズレッグロールクラッチ、そしてダブルアームスープレックスホールドで尚もピンフォールを迫る猛ラッシュ。

対して幾度のピンチも2カウントで凌ぎ切り、まだまだ勝負を諦めていないレイナもここから奮闘を見せ、ハデーメンの組み付きを力で振り解いて、ジャンピングネックブリーカーもかがんで避けて、ボディスラム。更に自らロープへ振ってエルボーパットを打ちかますと、勢い良く助走をつけてのランニングエルボードロップ。大技への布石を予感させますが、この後ハデーメンにバックフリップで捕らえられてしまい、そのまま2度目のエレガント・コケティッシュ・ジャーマンに繋げられると、レイナの余力はここで尽き、惜しくも3カウントのゴング。終始ペースを握ったハデーメンが2日目の敗北を振り払って快勝です。
×スティーブ・レイナ  対  メチャ・ハデーメン○
(10分46秒、エレガント・コケティッシュ・ジャーマン)


獲得ポイント 累計ポイント
スティーブ・レイナ 1046pt 4303pt
メチャ・ハデーメン 1546pt 4827pt




−第3試合−
(3424pt) サラ・マクドゥガル VS ジェニー・エース (3858pt)


開催前から話題となっていた“ムーヴメント対決”。開始早々からサラが顔面張り手、対するジェニーも強引なハンマースローでコーナーに激突させるなど、これまでの試合とは一変し殺伐とした空気が漂います。両者ほぼ互角で中盤戦を過ぎていくと、5分にジェニーがブレーンバスターでサラを場外に落とし、両手を大きく振り上げて挑発。するとサラが場内に入ってすぐさまジェニーを対角線コーナーにぶつけていくと、コーナー馬乗りのナックルアローを乱打し怒りを爆発。

これにジェニーはスリーパーホールドを2度に渡って決めるなどあえて冷静な攻め方を見せたかと思えば、サラをロープに振ってのメキシカンエースクラッシャーを炸裂。ここから一気に大技ラッシュか、サラが鎌本乱舞ですぐに体勢を立て直し、馬乗りになってのナックルアロー。これを喰らったジェニーもその後サラのバックについて、投げっ放しジャーマンで場外に投げ落とし。場内に戻れば今度はサラが裏拳でジェニーの顔面を砕いていき、2度目の鎌本乱舞から2度目の馬乗りナックルアロー。ムーヴメントという名のプライドを賭けた、激しい潰し合いが続きます。

この後はジェニーがネックブリーカードロップでサラを一旦倒すと、起き上がらせてからロープへ走っての浴びせ倒しラリアット、更にロープへ振れば2発目のメキシカンエースクラッシャーを決めていき、フィニッシュを狙うバック取りへ。これはサラに防がれるも、再度ロープへ振ってのメキシカンエースクラッシャーへ。サラが組み付きに行ったところも力で弾き倒し、バックを取って2度目の投げっ放しジャーマンスープレックス。

大技を連続で成功させたジェニーが勝利まで後一歩。その後エースクラッシャーを決めていき、バックを取って必殺技のコブラクラッチスープレックス。ここでフォールに入れば勝利も決定的となりますが、あえて引き起こしてもう一度バック取りへ。完膚なきまでに叩き潰そうとするジェニーでしたがこれはサラがエルボーで防いでいき、ランニングのフェイスクラッシャー。猛ラッシュを受け切りここから形勢逆転に持ち込みたいサラ、しかし直後に待っていたのはジェニーのエースクラッシャー。

この一発で気が収まったのか、ここでジェニーがようやくカバーの体勢に入ると、そのまま3カウントのゴング。宿敵サラを相手にしても自らの得意技を惜しまず出し切り、終盤戦を制したジェニー、累計ポイントで首位を保って後半戦へ突入です。

×サラ・マクドゥガル  対  ジェニー・エース○
(11分20秒、エースクラッシャー→体固め)


獲得ポイント 累計ポイント
サラ・マクドゥガル 1120pt 4544pt
ジェニー・エース 1620pt 5478pt




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